天体写真撮影において、極軸の正確なセッティングは写真の出来栄えを大きく左右する重要な要素です。極軸がずれていると、長時間露光で星が線状に写ってしまい、美しい点像を得ることができません。特に、高精度な天体撮影を目指す方にとって、極軸望遠鏡は欠かせないアイテムと言えるでしょう。今回は、ビクセンの最新モデル「極軸望遠鏡PF-LⅡ」を中心に、その特徴や使い方、そして従来のSX極軸望遠鏡やKYOEIオリジナル極軸望遠鏡との比較を通して、天体写真撮影における極軸合わせの重要性と最適な機材選びについて解説します。
極軸望遠鏡とは?
極軸望遠鏡は、赤道儀の極軸を天の北極に正確に合わせるための小型望遠鏡です。正確な極軸合わせにより、天体の動きに合わせて望遠鏡を追尾させることができ、長時間露光でも星を点像として捉えることが可能になります。ビクセンの極軸望遠鏡は、その高い精度と使いやすさで多くの天体写真愛好家から支持を得ています。
ビクセン極軸望遠鏡PF-LⅡの特徴
ビクセン極軸望遠鏡PF-LⅡは、従来モデルPF-Lを改良し、特に光害の影響を受けやすい環境下でも北極星を捉えやすく設計されています。主な特徴は以下のとおりです。
・広視野: 倍率を5倍に変更し、実視界を10度に拡大。これにより、北極星と基準星(こぐま座δ星、ケフェウス座51番星)をより容易に視認できます。
・赤色LED照明: 内蔵の赤色LED照明がスケールを照らし、暗い場所でも視認性を確保。明るさは8段階で調整可能で、自動消灯機能も搭載。
・幅広い対応機種: APシリーズ、SXシリーズ、AXJ、AXDシリーズ、ポラリエUなど、多様な赤道儀に対応。
・高精度: 3分角以内の据付精度を実現

極軸合わせの手順
PF-LⅡを用いた極軸合わせの手順を解説します。
①まず夜空を見て北斗七星とカシオペアを確認します。極軸望遠鏡 PF-LⅡをのぞいてみると、北斗七星とカシオペアが見えますので、その星座を目安に極軸望遠鏡の回転させます。
*極軸望遠鏡の視野内には、実際のカシオペア座や北斗七星は見えません

②極軸望遠鏡をのぞきながら、方位調整ツマミと高度調整ツマミを回して、スケール上にある北極星を導入します。スケールをよく見ると「POLAR IS」と書かれた文字の上に、「2014」「2040」という文字が書かれています。 2014年-2040年にかけての北極星に位置ですが、ここでは、「2014」と「2040」の間(線分の切れ目)に、北極星を導入します。

③次に、「ケフェウス座51番星(51Cep)」と「こぐま座δ星(δUMi)」を合わせます。この2つの星はとても暗く、最初は苦労するかもしれません。北極星を合わせて目盛の周辺を見ると「51Cep」と「δUMi」が見えてきますので、この2つの星を導入します。微調整していくと、北極星の位置が少しずれてしまいますが問題ありません。「北極星」「51Cep」「δUMi」を極軸望遠鏡回転軸、方位調整ツマミや高度調整ツマミを回しながら所定の場所に追い込み「天の北極」と「極軸望遠鏡の回転中心」を合わせます。なお、暗いほうの51Cepがどうしても見えない場合は、δUMiだけでも合わせてください。


2023年であれば(●)の位置になります。

2023年であれば(●)の位置になります
PF-LⅡ使用レビュー
実際にPF-LⅡを使用してみたところ、以前使用していたSX極軸望遠鏡に比べて、格段に短時間で高精度な極軸合わせが可能になったと感じました。特に光害の少ない環境では、北極星の導入が非常にスムーズです。焦点距離374mmの望遠鏡で撮影した球状星団M13の写真では、露出時間150秒でも星が点像として綺麗に写りました。


アプリ「PF-L Assist」の活用
極軸合わせをサポートするアプリ「PF-L Assist」(無料)もおすすめです。このアプリを使用することで、北極星の位置をより正確に把握でき、スムーズな極軸合わせが可能になります。iPhone、iPad、Androidで利用可能です。



他の極軸望遠鏡との比較
SX極軸望遠鏡との比較
SXD2赤道儀に付属していたモデル。月日目盛りを用いた簡便な操作が特徴でしたが、現在は生産終了。その理由はわかりませんが、SX極軸望遠鏡は高精度である一方、製造に手間がかかる設計だった可能性があり、また、同価格帯でより汎用性が高い製品やデジタル技術を搭載した製品が市場に登場したことで、コストパフォーマンスの面で不利になったのかもしれません。

KYOEI オリジナル極軸望遠鏡との比較
比較的簡単にセッティングが可能。明るい場所での使用に適していましたが、PF-LⅡの方が高精度な極軸合わせが可能。比較的安価なモデルが多いですが、精度や操作性、耐久性などがビクセンPF-LⅡに劣ります。

まとめ
ビクセン極軸望遠鏡PF-LⅡは、天体写真撮影の精度を向上させるための強力なツールです。特に光害地でも北極星を捉えやすく、高精度な極軸合わせを実現します。天体写真撮影に取り組むすべての方におすすめできる製品です。
