「双眼鏡」と聞くと、「遠くのものを大きく見るための道具」というイメージを持つ方が多いかもしれません。もちろんそれも正しいのですが、実は双眼鏡にはさまざまな種類やサイズがあり、レンズの構造や性能によって、見え方には意外と大きな違いがあります。
この記事では、双眼鏡の基本的な仕組みやスペックの見方を中心に、星空を観察するときにどんな違いが出てくるのか、そして自分に合った双眼鏡を選ぶためのポイントについて、できるだけわかりやすくご紹介していきます。少し長めの内容になりますが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
双眼鏡の見え方を左右する「種類」と「サイズ」
双眼鏡にはさまざまな種類やサイズがあり、それぞれに適した使い方があります。星空を観察する際にも、目的に合ったタイプを選ぶことが大切です。まずは、双眼鏡の基本的なタイプやサイズについて知っておきましょう。
双眼鏡のサイズについて
双眼鏡のサイズによって、見え方や扱いやすさが変わってきます。たとえば、大きめのモデルは明るくはっきりと見える反面、重さがあるため長時間の使用には向かないことも。
一方で、小型のモデルは軽くて持ち運びに便利ですが、見える範囲や明るさに限りがある場合もあります。それぞれの特徴を知っておくことで、自分の使い方に合った双眼鏡を選びやすくなります。
| サイズ | 特徴と用途 |
| 小型双眼鏡(有効径:約25mmまで) 例:8×21、10×25 など | とても軽量でコンパクトなため、持ち運びに便利です。ただし、対物レンズが小さい分、暗い場所ではやや見えにくくなる場合があります。 → コンサートや街歩きなど、明るい場所での使用に適しています。 |
| 中型双眼鏡(有効径:約30〜40mm) 例:8×30、10×42 など | 明るさと携帯性のバランスがよく、さまざまなシーンで使いやすいタイプです。 → 星空観察の入門用としてもおすすめです。 |
| 大型双眼鏡(有効径:50mm以上) 例:7×50、10×50、20×60 など | 大きな対物レンズにより、暗い場所でも明るくクリアに見ることができます。ただし、本体が重くなるため、長時間の使用には三脚の使うと疲れにくいです。 → 本格的に星空を観察したい方に向いています。 |
星空をどのように楽しみたいかによって、選ぶ双眼鏡のサイズも変わってきます。たとえば、気軽に持ち歩いて夜空を眺めたい場合は、中型の双眼鏡が扱いやすくて便利です。一方で、じっくりと星を観察したい方には、大型のモデルを検討してみるのもひとつの方法です。
双眼鏡の種類(プリズムの違い)
双眼鏡にはいくつかのタイプがあり、内部に使われている「プリズムの構造」によって、見え方や使い心地が異なります。ここでは、星空観察によく使われる代表的な4つのタイプをご紹介します。
① ポロプリズム式:星空観察の定番スタイル
本体が「くの字型」をしており、対物レンズと接眼レンズが少しずれた位置にあるのが特徴です。
●光を効率よく通す構造のため、視界が明るく立体感のある見え方が楽しめます。
●比較的手ごろな価格のモデルも多く、星空観察をこれから始めたい方にも選びやすいタイプです。
●本体がやや大きめで重さもあるため、長時間の使用では手が疲れやすい場合があります。
🌟明るく、奥行きのある視界を重視したい方にとって、ポロプリズム式は検討しやすい双眼鏡といえます。実際に、星空観察の場面でもよく選ばれている定番のタイプです。

② ダハプリズム式:持ち運びやすさを重視する方におすすめ
対物レンズと接眼レンズが一直線に並んだ、スリムでスタイリッシュなデザインが特徴です。
●軽量でコンパクトなため、持ち運びやすく、収納にも便利です。
●防水仕様のモデルも多く、屋外での使用にも適しています。
●構造がやや複雑なため、価格が高めになる傾向があり、明るさはポロプリズム式に比べて控えめな印象です。
🌿気密性が高く防水性に優れたモデルも多いため、過酷なアウトドア環境でも安心して使用できます。「機動力」を重視するなら、 ダハプリズム式を検討してみてはいかがでしょうか。

③ ガリレオ式:気軽に使いたい方向けのシンプルなタイプ
プリズムを使わず、凹レンズと凸レンズだけで構成された、とてもシンプルな仕組みの双眼鏡です。
●安価かつ軽量・コンパクトで、気軽に持ち歩いて使うことができます。
●倍率が低めに設計されており、広い範囲を見渡しやすく、操作も簡単です。
●構造上、倍率を上げると視野が極端に狭くなるため、高倍率を求める星空観察には不向きな機種もあります。
🌌観劇やコンサートなど、比較的近くの対象を明るく楽しむのに適しています。その一方で、最近ではあえて超低倍率にすることで広い視界を確保した「星座観察用」のモデルも人気です。目的の対象に合わせて、視野の広さや倍率をチェックして選ぶのがポイントです。

星座鑑賞用双眼鏡「笠井トレーディング CS-BINO 2×40」の記事も書いています。興味があれば読んでみてください。
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④注目の防振双眼鏡
防振双眼鏡は、内部の補正機構によって手ブレを抑え、高倍率でも安定した像を楽しめる双眼鏡です。防振機構は独立した光学方式ではなく、ポロプリズム式やダハプリズム式といった一般的な双眼鏡に組み合わされる付加機能で、「ポロプリズム式 × 防振」「ダハプリズム式 × 防振」といったモデルが販売されています。
高倍率でも三脚を使わずに快適な視界を得られる点が大きな魅力で、近年、観劇や野鳥観察、天体観測など幅広い用途で注目されている双眼鏡です。
●防振機能により、12倍や14倍といった高倍率でも、手持ちとは思えないほど安定した視界を楽しめます。
●重い三脚を持ち運ぶ必要がなく、立ったまま・自由な姿勢で安定した視界を得られるのが最大の魅力です。
●防振機能の使用には電池が必須で、一般的な双眼鏡に比べると本体重量や価格は高めになります。
防振双眼鏡「Vixen ビクセン ATERA II H12×30」についての記事も書いていますので、こちらも興味があれば読んでみてくださいね。
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チェックしておきたいスペック
双眼鏡を選ぶときは、見た目や価格だけでなく、性能を示す数値にも注目しておきたいところです。特に星空観察では、双眼鏡の明るさや視野の広さによって、見え方に大きな違いが生まれます。
ここでは、私が実際に使っている双眼鏡を例にしながら、知っておくと役立つ基本的なスペックについて、順を追ってご紹介していきます。


①「8×21」や 「7×50」ってどういう意味?
双眼鏡には、「7×50」や「8×21」といった数字が書かれています。それぞれ決まった意味があり、選ぶ際の大切なポイントになるので、ぜひチェックしておきましょう。
●最初の数字(7や8)=倍率
見たい対象が、その数値分だけ大きく見えることを表しています。星空観察では、7倍から10倍程度が使いやすいとされており、見やすさと安定感のバランスが比較的良い倍率です。ただし、倍率が高くなりすぎると手ブレが目立ち、かえって見づらく感じる場合もあります。
●次の数字(50や21)=口径(対物レンズの直径)
こちらは、レンズの大きさをミリメートルで表したものです。たとえば「7×50」の場合、対物レンズの直径が50mmという意味になります。レンズが大きいほど多くの光を集められるため、暗い夜空でも星がより明るく見えやすくなります。
このように、双眼鏡の数字は「どれくらい拡大して見えるか」と「どれくらい光を集められるか」を表しており、星空を観察したときの見え方に大きく関わってきます。

②視界(実視界・見かけ視界)
双眼鏡での見え方を左右する要素のひとつに、「視界」があります。視界には主に「実視界」と「見かけ視界」の2種類があり、それぞれ意味が異なります。
| 視界の種類 | 意味 | 選び方 |
| 実視界 | 双眼鏡を通して実際に見える範囲の広さを角度(度)で表したものです。 | 数値が大きいほど、一度に見渡せる範囲が広くなります。星空観察では、星座全体を眺めたり、目的の星を探したりする際に役立ちます。 |
| 見かけ視界 | 双眼鏡をのぞいたときに、どれくらい広く感じられるかを示す角度です。 | 一般的に、65度以上あるものは「広角」や「超広角」と呼ばれ、開放感のある見え方になりやすいとされています。 |

③レンズとコーティングの違いにも注目
双眼鏡の見え方は、使われているレンズの種類や、レンズ表面に施されたコーティングによっても大きく変わってきます。特に星空観察では、こうした違いが「見え味」に影響を与えることがあります。
レンズの種類
一般的に、レンズ構成やガラスの種類にこだわったモデルほど、白く輝く星の周囲に現れやすい紫や緑の縁取りといった「色のにじみ(色収差)」が少なく、シャープでクリアな視界を得ることができます。
特に「EDレンズ(特殊低分散ガラス)」を採用した双眼鏡は、色収差を効果的に抑えることで、星の輪郭を自然でくっきりとした像として映し出すのが大きな特徴です。
レンズは素材や加工の面でコストがかかるため価格はやや高めになりますが、より見え味にこだわりたい方にとっては、検討する価値のある選択肢といえるでしょう。
コーティングの違い
双眼鏡のレンズ表面には、光の反射を抑えるためのコーティングが施されています。このコーティングの有無や種類によって、光の透過率やコントラスト、見え方の明るさに違いが生じます。
たとえば「フルマルチコート」と呼ばれるタイプは、すべてのレンズ面に多層のコーティングが施されており、光のロスを抑えた設計がされています。そのため、明るさや見え方を重視したい場合には、フルマルチコートが施された双眼鏡を選ぶことで、より快適に感じられることが多いでしょう。

三脚に取り付ける場合は、「三脚取付ホルダー」が必要
双眼鏡で星空を眺めていると、手ブレが気になることがあります。特に口径が大きめの双眼鏡を使う場合や、時間をかけてじっくり観察したいときには、三脚が使えるかどうかで快適さに差が出ます。
そこで今回は、双眼鏡に三脚取付ホルダーを取り付けて使用してみました。ホルダーを使うことで、一般的なカメラ用三脚に固定でき、視界が安定します。実際に試してみると、星の像が落ち着き、光の広がりや淡い天体も比較的観察しやすく感じられました。
手持ちで気軽に使える手軽さはやや失われますが、その分、安定した視界が得られる点は大きなメリットです。双眼鏡での星空観察をより快適に楽しみたい方にとって、三脚取付ホルダーは検討してみる価値のあると感じます。



実際に使ってみて分かった天体の見え方
実際に星空がどのように見えるのかを確かめるため、今回は7×50の双眼鏡を使って観察してみました。撮影は、双眼鏡の接眼レンズにデジカメを当てて行ったため、多少の手ブレがあり、星が流れて写っている部分もありますが、雰囲気だけでも伝わればうれしいです。
ここでは、観察した代表的な天体の見え方を紹介します。なお、今回の星空観察に使用した双眼鏡の主なスペックは、以下のとおりです。
🌟 今回使用した双眼鏡のスペック
7×50(倍率7倍、口径50mm)、Bak4プリズム、ロングアイレリーフ、マルチコート、防水機能


オリオン大星雲 (M42)
肉眼では淡いモヤのようにしか見えませんが、7×50の双眼鏡では、中央の明るい部分を中心に光が広がっている様子を確認できました。

すばる(プレアデス星団 M45)
肉眼では6〜7個ほどの星しか見えませんが、双眼鏡を使うと多くの星が視野いっぱいに広がります。星団全体がひとまとまりとして見え、とても印象的でした。

アンドロメダ銀河 (M31)
天体望遠鏡のように渦巻き構造までは分かりませんが、楕円形に広がる大きな光のかたまりとして捉えることができました。肉眼よりも存在感がはっきりし、「銀河」を見ているという実感が持てました。

月:スマホで撮影
試しにスマホホルダーを使って月を撮影してみました。双眼鏡の接眼レンズとスマホのカメラを固定できるため、手ブレが抑えられ、クレーターの様子も比較的はっきり写りました。



まとめ
今回使用した「7×50」の双眼鏡では、オリオン大星雲やすばる、アンドロメダ銀河を比較的はっきりと捉えることができ、夜空の奥行きや広がりを感じることができました。自分に合った双眼鏡と出会うことで、見慣れた景色や星空も、これまでとは少し違った印象で楽しめるようになります。ぜひ、自分に合った一本を見つけて、双眼鏡ならではの星空観察の世界を味わってみてください。
