📙【書評】あなたの体を形づくる元素はどこから来た?宇宙の壮大な歴史をたどる『なぞとき 宇宙と元素の歴史』

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中学生のとき、「水兵リーベ僕の船七曲りシップスクラークか」という語呂合わせで、元素の周期表を覚えた方も多いのではないでしょうか。実は、私たちの身の回りにある元素は、約138億年前に始まった宇宙の歴史と深く関わっています。

和南城伸也さんの著書『なぞとき 宇宙と元素の歴史』は、宇宙の誕生から現在まで、どのようにして元素が生まれ、やがて私たちの体を形づくるようになったのかを、やさしく解き明かしてくれる一冊です。

「私たちは星の子ども」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。この本を読むと、それが単なる詩的な表現ではなく、科学的な意味を持つ言葉であることがわかります。星の内部で生まれた炭素や鉄などの元素が、長い時間をかけて宇宙を旅し、地球にたどり着き、そして今の私たちの体の一部となっている――。そんなつながりを知ると、宇宙と自分がどこかでつながっているような不思議な感覚を覚えます。

今回は、和南城伸也さんの『なぞとき 宇宙と元素の歴史』についてご紹介します。

目次

『なぞとき 宇宙と元素の歴史』(著:和南城伸也)内容紹介【ネタバレあり】

『なぞとき 宇宙と元素の歴史』の著者・和南城伸也さんは、私たちの体をつくる元素がどのように宇宙で生まれたかを探る宇宙物理学・天文学の研究者です。東京大学大学院で博士号を取得された後、国立天文台や理化学研究所、さらにはドイツのマックス・プランク研究所など、国内外で幅広く研究を積まれてきました。2019年より上智大学理工学部機能創造理工学科准教授として教育と研究の両面に携わられ、現在も活発に学術活動を続けられています。

本書では、星の誕生から人の存在へとつながる壮大な宇宙の物語を、専門家ならではの視点で、一般の読者にもわかりやすく解き明かしています。以下に各章の内容を簡単に紹介します。

第1章:宇宙も人間も同じ元素でできている

私たちの体を形づくる炭素や酸素、鉄といった元素は、実は星の中にも存在します。第1章では、「人間は星のかけらから生まれた」という言葉の意味を身近な例を交えてやさしく解説。自分の存在が宇宙とつながっているという驚きと感動を味わえる章です。普段、何気なく見ている空の星々が、私たちと同じ「素材」でできているという発見が、宇宙をより身近に感じさせてくれます。

第2章:水素とヘリウムができるまで――138億年前のビッグバン

宇宙の始まり――約138億年前のビッグバン。第2章では、誕生したばかりの高温・高密度な宇宙の中で、最初の元素である水素とヘリウム、そしてごくわずかなリチウムがどのように生成されたのかを解き明かしています。エネルギーから物質が生まれ、原子が形を取りはじめる過程を、わかりやすく物語として描いています。

第3章:炭素と酸素ができるまで――星の中の核融合

星はただ輝いているだけの存在ではなく、宇宙の中で新しい元素を生み出す「工場」でもあります。第3章では、星の内部で起こる核融合反応が、炭素や酸素といった生命に欠かせない元素をどのように作り出すのかを紹介。恒星の一生とともに元素が誕生していく過程は、まるで宇宙の命のリレーのようです。星が燃えることが、私たちの存在の源であることに気づかされます。

第4章:鉄の仲間たちができるまで――超新星爆発がつくる元素

巨大な星が寿命を迎えると、超新星爆発を起こします。第4章では、この爆発によって鉄やケイ素などの重い元素が生まれ、宇宙へまき散らされる仕組みをわかりやすく解説。星の最期が、次の世代の星や惑星、さらには生命の材料となる――そんな死から新しい命が生まれる宇宙の循環が描かれています。

第5章:レアアース、金、プラチナができるまで――新しい主役!中性子星合体

金やプラチナといった貴金属はどこから来たのか? 第5章では、超新星の後に残る中性子星が衝突することで、これらの重い元素が生まれることを紹介します。中性子星合体という壮絶な現象を、最新の観測結果や理論研究を交えて解説しています。金やレアアースが、遠い宇宙の衝突の産物である――そんな事実に、科学のロマンを感じずにはいられません。

第6章:私たちの住む地球ができるまで――宇宙の化学進化から生命の星へ

超新星や中性子星合体で作られた元素は、やがて集まり太陽系を形づくります。第6章では、塵やガスがどのように集まり、地球が誕生し、水や大気を得るまでの過程を追います。宇宙の化学進化が「生命の星」へとつながっていく壮大な流れが描かれ、地球の存在が決して偶然ではないことを感じさせてくれます。

第7章:中性子星合体が見つかるまで――星たちが奏でる重力波のメロディ

2017年、世界各地の観測施設が中性子星同士の衝突による重力波を初めて検出しました。この画期的な観測によって、金やプラチナなどの重い元素が実際にどのように作られるのかが、初めて直接的に裏づけられました。宇宙の「音」ともいわれる重力波の観測が、元素誕生の謎を解き明かし、私たちの宇宙理解を大きく前進させたでき事として紹介しています。

第8章:宇宙と元素の物語のこれから

最後の章は、宇宙では今も新しい星が生まれ、古い星が消えていく営みを見つめながら、これからの研究がどのように進むのかを展望しています。望遠鏡や探査機の進歩によって、私たちはますます宇宙の「起源」に近づこうとしています。宇宙の歴史の中に自分自身が確かに存在している――そんな感動が心に残ります。

『なぞとき 宇宙と元素の歴史』を読んで

鉄は、太陽よりもずっと重い星が寿命を迎えたときに起こる「超新星爆発」という現象によってしか生まれません。その鉄が、今、私たちの体の中にあると思うと、とても不思議な気持ちになります。また、金やプラチナといった貴金属も、中性子星同士が衝突するという、非常にまれな現象によって生まれると知り、宇宙の壮大さに改めて驚かされました。「星の死がなければ、私たちの命もなかった」という言葉には、宇宙と生命の深いつながりが込められているように感じます。

宇宙や元素、そして生命のつながりに興味がある方には、この本を読んでみることで、新しい発見や気づきがあるかもしれません。よろしければ、手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

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