天体撮影には、PCや赤道儀、オートガイダー、カメラなど多くの機材を安定して動かすための電力が必要です。さらに夜間は結露対策として防水性も重要で、一晩中安心して撮影するには半日以上使える電力量が欠かせません。
そこで、これらの条件を満たすためにポータブル電源を検討し、3つの候補から 「Anker Solix C800 Plus Portable Power Station」を選びました。本記事では、この製品が天体撮影に適しているかどうかを詳しくレビューしていきます。
天体撮影の厳しい環境
本格的な天体撮影では、多くの機材を動かすため大容量のポータブル電源が必須です。さらに、
●夏:センサーの熱ノイズ対策に冷却カメラが有効
●冬:結露やバッテリー性能低下への対策としてレンズヒーターやフードが必要
といったように、季節ごとの環境対策も欠かせません。つまり、高品質な天体写真を撮るには「熱・結露・電力不足」といった課題に備え、安定した電力供給を確保することが最も重要になります。
検討した3つのポータブル電源
天体撮影の過酷な環境に耐えうるポータブル電源を探し、「容量」・「性能」・「出力ポート」・「重量」・「価格」・「保証期間」・「アフターサービス」などを総合的に検討した結果、次の3機種を候補に絞り込みました。
●Anker Solix C800 Plus Portable Power Station
●Jackery ポータブル電源 600 Plus
●EcoFlow RIVER 2 Pro

Anker Solix C800 Plus Portable Power Station | Jackery ポータブル電源 600 Plus | EcoFlow RIVER 2 Pro | |
発売日 | 2024年 4月 | 2024年4月 | 2023年 4月 |
バッテリー容量 | 768Wh | 632Wh | 768Wh |
定格出力 | 1200W | 800W | 800W (X-Boost: 1000W) |
瞬間最大出力 | 1600W | 1600W | 1600W |
バッテリー種類 | リン酸鉄リチウムイオン電池 | リン酸鉄リチウムイオン電池 | リン酸鉄リチウムイオン電池 |
充電時間 (AC) | AC:90分(通常モード) | AC:1.7時間 | AC:1.17時間 |
動作温度範囲 | -20°C 〜 40°C | -10°C 〜 45°C | -10°C 〜 45°C |
充電サイクル | 3000 | 4000 | 3000 |
重さ | 約10.9 kg | 約7.3 kg | 約7.8 kg |
出力 | AC×5 USB Type-A×2 USB Type-C×2 シガーソケット×1 | AC×2 USB Type-A×1 USB Type-C×2 シガーソケット×1 | AC×4 DC×2 USB Type-A×3 USB Type-C×1 シガーソケット×1 |
それぞれのモデルには魅力や強みがあり、一概にどれが一番とは言えません。その中で最終的に私は「Anker Solix C800 Plus」を選びました。以下では、その理由をお伝えします。
Anker Solix C800 Plus Portable Power Station の購入ポイント
購入ポイント
このポータブル電源の購入を決めたポイントは以下の通りです。
●高出力性能:768Whという中容量帯ながら、1200Wを安定した出力。
●急速充電:通常モードで約90分のフル充電。急な撮影にも安心。
●広い動作温度範囲:-20℃〜40℃まで使用可能で、冬の天体撮影にも対応。
●出力ポート数が豊富:AC×5、USB Type-A×2、USB Type-C×2、シガーソケット×1と多様な機器に対応
●伸縮式ポールが付属:機材準備や片付け、緊急時の照明として活用可能。
●長期使用への安心感:3,000回以上の充放電サイクルで耐久性も十分。
●使いやすいアプリ:スマホからバッテリー残量や出力状況を簡単チェック。
●防水アクセサリー(別売) :専用の防水・撥水カバーで屋外利用にも安心。
多くのポータブル電源は -10℃程度までの使用に対応していますが、Anker Solix C800 Plus Portable Power Station は-20℃まで使用可能です。これにより、冬の天体撮影のような寒冷地での使用でも、より安定した電力供給が期待できます。実際にそこまで低温になる場面は限られるかもしれませんが、使用可能温度の幅が広いという点は、利用者に安心感を与えてくれる大きな魅力のひとつです。
Anker Solix C800 Plus Portable Power Stationの紹介
大きさと重量
Anker Solix C800 Plus Portable Power Stationは、パワフルな性能と携帯性を両立したモデルです。サイズは約幅37.1cm、奥行き20.5cm、高さ25.0cmと、他の製品と同様にコンパクトに作られています。
重量は約10.9kgで、比較した中ではやや重めですが、持ち運びが極端に大変というわけではありません。実際に使ってみても、個人的には大きな負担は感じませんでした。


ポート数
Anker Solix C800 Plus Portable Power Station は、以下のように多彩な出力ポートを搭載しています。
●ACコンセント ×5
●USB-C ×2(うち1つは最大100W対応)
●USB-A ×2
●シガーソケット ×1
これにより、AC電源やUSB充電を必要とする複数の機器を同時に接続可能です。特に天体撮影のように、多数の機材を並行して使用する場面で非常に便利です。

付属ライト
体には ライトと伸縮ポール が付属しており、暗い環境での作業も安心です。機材の設置や片付けの際に周囲を照らせるだけでなく、収納時に自動充電されるため「充電し忘れ」の心配もありません。ライトは懐中電灯のように先を照らしたり、周辺を明るく照らしたり、また、暗めに照らしたりするなど、調整が可能です。



専用アプリ
Anker Solix C800 専用アプリは、本体ディスプレイの情報を見やすく表示し、直感的に操作できるのが特徴です。充電状態やバッテリー残量の確認に加え、出力ポートのオン/オフ切り替えも簡単に行えます。離れた場所から手元で細かく設定できるため、とても便利です。


2種類あるAnker Solix C800
Anker Solix C800 には2種類あります。
●Anker Solix C800 Plus Portable Power Station :
専用ライトが付属しており、キャンプや車中泊などで照明としても活用可能。
● Anker Solix C800 Portable Power Station:
ライトは付属していませんが、ケーブルをすっきり収納できるデザイン。
価格にも差があるため、用途に合わせて「照明も必要かどうか」で選ぶと便利です。

実際に使ってみた感想
バッテリー性能について
実際にAnker Solix C800を使って、赤道儀・カメラ・ガイドカメラ・PCを稼働させながら約10時間撮影を行ったところ、バッテリー残量は28%残っていました。軽めの機材構成であれば十分に対応できると感じます。
ただし、天体撮影に必要な電力は機材や環境条件によって大きく変化します。冷却機能付きカメラは気温が高いほど電力を消費しやすく、赤道儀は搭載機材の重さ、PCは作業内容によって消費量が増えるため、実際の撮影環境を踏まえて容量を計算することが大切です。

付属ライトについて
「強」モードは、とても明るく周囲を照らせますが、点灯時間は約8時間ほど。天体撮影中には明るすぎる場面もあるかもしれません。一方、「弱」モードは、光量を抑えつつもしっかり手元を照らせ、一晩中使用可能。私は赤いセロハンを巻いて利用し、暗順応を妨げないよう工夫しました。
伸縮ポールを利用すれば、ライトを高い位置に設置できるため、広範囲を均一に照らせます。懐中電灯のように先をスポット的に照らすことも可能です。なお、ライトが付属しない通常モデル(C800)もあるため、照明機能が必要かどうかで選ぶのがおすすめです。





天体撮影以外での活用法
この程度の容量があれば、天体撮影だけでなく幅広いシーンで役立ちます。ポータブル電源は、持ち運びできる大容量バッテリーとして、さまざまな面でサポートしてくれます。
🏕キャンプや車中泊
キャンプや車中泊といったアウトドアでは、ポータブル電源は欠かせないアイテムです。これがあれば、電源のない場所でもスマホやPCの充電に困ることはありません。さらに、電気毛布や扇風機、照明、調理器具なども使えるため、アウトドアの快適さがぐっと高まります。
🌀災害時
次に、ポータブル電源は、災害時の強い味方でもあります。地震や台風で停電が起きたとき、スマホやラジオの充電、照明の確保など、情報を得たり、日常生活を維持したりするために必要な電力を供給してくれます。さらに、ソーラーパネルと組み合わせれば、長期間の停電でも電力を確保し続けられるので、いざという時の備えとして心強いですね。
まとめ
天体撮影に使えるポータブル電源として、Anker Solix C800 Plus Portable Power Stationは選択肢のひとつになると思います。大容量で急速充電に対応し、広い温度範囲で使える点は心強い特徴です。専用の防水バッグも用意されているため、屋外での持ち運びにも安心感があります。電源に関する不安を減らしてくれる実用的なモデルなので、天体撮影やアウトドア用のポータブル電源を検討している方は参考にしてみてください。
